ドライアイについて
ドライアイは、涙の分泌量の減少や、涙の質が低下することで、目の表面が乾燥してしまい、様々な症状を引き起こしてしまう状態のことです。乾燥性角結膜炎や涙液減少症などと呼ばれることもあります。
現代はパソコンでの作業や、スマートフォン、タブレット等の普及により、目を酷使することが多く、ドライアイになりやすい環境になっています。ドライアイは目がごろごろするなどの不快感、目の疲れなどを招き、日常生活にも影響を与えます。またドライアイでは、角膜(黒目の部分)や結膜(白目の部分およびまぶたの裏側)に傷を伴うことも少なくなく、細菌などにも感染しやすいと考えられ、視力が低下することもわかっています。
以下のような症状がありましたら、単なる目の疲れなどではなく、重い目の疾患を引き起こす可能性のあるドライアイかもしれませんので、お早めにご相談ください。
- 目が乾いた感じがする
- 目が重たい感じがする
- 目がかすむ
- 目がごろごろする
- 目がかゆい
- 目が痛い
- 光を見るとまぶしい
- パソコン作業や読書をすると目が疲れやすい
- エアコンが入っていると目がつらくなる
- 目が充血する
- 原因もなく涙が出る
- 目ヤニが出る など
ドライアイの原因
ドライアイの原因としては、加齢による涙の分泌量の低下や、パソコンなどの端末を長時間にわたって見続けるVDT(Visual Display Terminals)作業や運転などによる瞬きの回数の減少、コンタクトレンズの長時間装用、エアコンなどによる室内の乾燥などが挙げられます。このほか、喫煙、緊張・ストレス、薬物の影響、全身の病気(シェーグレン症候群等)などが原因となっている場合もあります。
ドライアイを引き起こす要因としては、涙の量が少なくなることだけではなく、涙の質の低下も大きくリスクを高めます。ドライアイの患者様の約8割の方は涙の量は減っておらず、涙の質などに問題があることがわかっています。
涙の成分の多くは水分ですが、涙の蒸発を防ぐ脂質や、涙を目の表面に留めておく役割を果たす「ムチン」という成分も含まれています。水分は涙腺から、脂質はまぶたの裏のマイボーム腺から、ムチンは角膜上皮細胞から分泌されます。たとえばマイボーム腺の開口部が、汚れや老廃物によって目詰まりを起こすと、マイボーム腺機能不全を起こし、脂質の分泌が妨げられ、涙の蒸発が進行してドライアイを引き起こしてしまいます。
ドライアイの治療
ドライアイの治療としては、点眼薬による治療、涙点プラグという器具を使用した治療、さらにマイボーム腺機能不全に対しては、光を照射するIPL治療があります。
点眼薬による治療
点眼薬としては、涙の成分に近い人工涙液、保水効果が高く水分の蒸発を防ぐヒアルロン酸ナトリウム点眼液、ムチンの産生を促し涙の質を改善するレバミピド点眼薬などがあります。このほか、涙を分泌させて目の水分量を増やし、ムチンの分泌も促すジクアホソルナトリウムという点眼薬もあります。
涙点プラグによる治療
涙点プラグは涙の排出口である涙点に、微小な「栓」をはめ込み、涙の排出量を減らすことで症状を改善するもので、外来にて点眼麻酔を使用して挿入します。涙点プラグには固体プラグ(シリコン製)と液体コラーゲンプラグがあります。液体コラーゲンプラグでは、注入したコラーゲンは少しずつ分解または排出され、治療前の状態に自然に戻ります。効果の持続期間は2~3ヶ月です。
マイボーム腺機能不全について
ドライアイの原因の一つであるマイボーム腺機能不全は、まぶたの内側にあるマイボーム腺という脂質を分泌する腺がうまく機能しない状態を指します。マイボーム腺機能不全は、大きく「分泌減少型」と「分泌増加型」に分けられますが、圧倒的に多いのが「分泌減少型」で、ドライアイの原因となるのも、この「分泌減少型」です。
分泌減少型の原因には、閉塞性、萎縮性、先天性がありますが、もっとも多いのは閉塞性です。これは加齢などによってマイボーム腺に過剰な角化物が蓄積して詰まってしまうもので、その結果、マイボーム腺からの脂質の分泌量が減少してしまいます。このほか感染によって起こる麦粒腫(ものもらい)やアトピー、スティーブンス・ジョンソン症候群、トラコーマといったほかの病気で分泌減少型のマイボーム腺機能不全が引き起こされる場合もあります。
マイボーム腺機能不全の治療としては、主に温罨法、抗菌薬の点眼・内服、光線を用いたIPL(Intense pulse light)治療があります。
温罨法はまぶたを温めることで脂質を溶かし、マイボーム腺の詰まりを緩和させます。電子レンジで温めたタオルなどで行う方法のほか、毎日お風呂でタオルを温め行うのも効果的でしょう。眼科では赤外線によって温める医療機器もあります。感染が原因となっている場合は、抗菌薬を用います。IPL治療はまぶたの周囲に光を照射することによって、マイボーム腺の機能回復を図るものです。
ドライアイのIPL治療(自費診療)
当院では、自費診療(全額患者様負担)にてIPL(Intense Pulse Light)によるドライアイ治療(マイボーム腺機能不全治療)をおこなっています。IPLで使用される治療機器は、アメリカ食品医薬品局(FDA)においてマイボーム腺機能不全に関連するドライアイ治療として適応承認されているもので、日本の厚生労働省においても2023年6月、マイボーム腺機能不全の治療に対する適応承認がなされました。
IPL治療によるドライアイ改善の仕組み
IPL治療は光による治療法です。使用する光は、皮膚に有害な波長を取り除き、治療に必要な波長(400〜1,200 nm)だけを選択したものです。これをカメラのフラッシュのようにまぶたの周囲の皮膚に向け照射することで、毛細血管に刺激を与え、余剰な脂質を溶かし、マイボーム腺の詰まりを解消します。これによりマイボーム腺の機能が回復し、正常な涙液が分泌されるようになることで、ドライアイの改善が期待できます。
またドライアイの原因のひとつに、顔ダニとも呼ばれるデモデックスという寄生虫が挙げられます。これは毛根や皮脂腺などヒトの皮膚に生息しており、まつげに大量に繁殖すると眼瞼炎やドライアイなどの合併症を引き起こします。IPL治療は、このダニの抑制にも効果があるとされています。
IPL治療の流れ
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検査
患者様のドライアイの原因、状態など、IPL治療の適応かどうかを診察、検査します。適応と判断されましたら、治療内容についてご説明し、同意していただいたうえで治療となります。
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準備
治療前に基礎化粧品含むメイクを落としていただきます。当日はなるべくメイクを落としてご来院ください。目の周囲に毛が生えていると、反応して痛みを生じる場合があるため、治療前に一部、剃毛または脱毛をお勧めすることがあります。またIPLを当てる場所にほくろがある場合、こちらも反応してしまいますので、パッチシールを貼ってカバーします。
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治療
治療にあたっては、眼球を守る専用のアイマスクを顔に密着させます。照射部位(まぶた)に専用のジェルを塗り、こめかみからまぶた、鼻へかけてIPLを照射します。終了しましたらジェルを拭き取り、目の周辺を洗浄します。
マイボーム腺からマイバムを圧出して終了します。
IPL治療後の注意事項(副作用等)
- 当日は日焼け止めをご持参いただき、帰宅時に塗布するようにしてください。
- 洗顔、入浴、メイクなどの日常生活の制限はとくにありません。
- 治療後2週間程度は、日焼け止めを塗るようにしてください。
- 治療後、皮膚に赤みを帯びる場合がありますが、多くは2~3時間で元に戻ります。
- 皮膚の弱い方ですと、赤みやヒリヒリとした感覚がしばらく続くことがあります。
※目の充血、日光に対する過敏な反応、強い眼精疲労などの症状がみられた場合は、速やかに医師にご相談ください。
IPL治療の回数
治療間隔は、3~4週間おきに4回以上実施すると効果が高いと言われいますが、重症度と罹患期間によって異なります。
IPL治療の費用
IPL治療の費用についてはお問い合わせください。
- 治療費用は自由診療のため、全額自己負担です。健康保険の対象外となります。